令和元年度 各教科の研究について

研究主題:持続可能な社会の実現に貢献する実践者の育成

     ―既有の知識や経験がつながる「深い学び」の創造を通して―

                                                  (2年研究1年次)

 

 研究の焦点

  ○既有の知識や経験を基にした学び合いを取り入れた学習指導

  ○教科の学びをつなぐ学習

  ○実践や価値の実感につなげる評価(パフォーマンス評価等)

 

【国語科】

言葉によって深い学びを共に創りあげる学習活動の展開

○生徒の課題意識や目的意識を大切にし、対話的な学びを通して課題を解決する学習展開の工夫

『故郷』を教材とした実践。言葉や文章に対する疑問や、題材を学習する目的を意識した学習課題やパフォーマンス課題を設定した。自分の読みを仲間と共有する中で、自分の読みを再構築する授業を行った。(細川 美保)

 

○異学年との関わり合いの中で考えを深め、主体的な読み手となる学習指導の工夫

 『字のない葉書』などの教材において、生徒自らが読みの課題を設定し、他の生徒と意見を交わしながら課題を解決する学習を行った。また、附属小学校6年生と「読書会をしよう」という学習を行い、前の学習で学んだ課題の設定の仕方などを生かして学習に臨んだ。様々な視点から物事を考えたり自分の読みを深めたりすることにつながった。(大上 航太)

 

○自分の考えを自分の言葉で伝え合う対話によって課題を解決する学習展開の工夫

『アイスプラネット』を教材として扱った実践。「本文の内容と関連付けながら、自分の生き方について考える」というパフォーマンス課題を解決するために文章を読んだ。深い読みを実現するために、文章の内容と自分の生活経験を結び付けながら読み取らせた。さらに、それらを伝え合う活動を通して、自分と他者の読みを対比し、読みを再構築したり、新たな読みの視点を得たりしながら、自分の読みを広げたり深めたりすることができた。(丸山 佑樹)

 

【社会科】

よりよい社会や自分の姿を描く力の育成

○社会の形成者として今を考察し未来社会を構想する社会科学習の展開

公民的分野の各単元で、①「学び」を生かし合う問題解決的な学習の充実、②「学び」を生かす実践者としての資質・能力を育てる単元構成の工夫を行った。これにより、既有の知識や技能、体験等を基盤として社会の在り方や人間としての生き方について選択・判断する力、自国の動向とグローバルな動向を横断的・相互的に捉えて現代的な諸課題を考察する力、持続可能な社会づくりの観点から地球規模の諸課題を解決しようとする姿が見られるようになった。(西田 剛志)

 

○見方・考え方を働かせ、「つながり」を積み重ねながら深く学び、自分ごととして行動する生徒の育成
 -公民的分野「私たちが生きる現代社会と文化の特色」の実践より-

導入時にプラスチック汚染というリアリティーのある教材と生徒を「つなぐ」工夫をし、地理的・歴史的な見方・考え方を働かせる問いを設定し、ねらいに迫らせた。追究過程では、問題の背景や影響を四つの視点で考察させ、またジクソー学習の手法で他者との「つながり」の中で考えを広げ、知識同士を「つなぎ」ながら論理的に思考させた。構想過程では「プラスチックのマテリアルフロー(環境省出典)」の図を提示し、社会全体のしくみを「可視化」・「操作化」することで、具体的な方策を構想できるように支援した。(江角 紀行)

 

○未来社会の形成者としての自覚を育む学び
 -「世界の諸地域 アジア州」の実践より-

現代社会の大きな問題となっている「海洋プラスチック問題」を取り上げ、その背景や影響の追究を通して、アジア州の地域的特色を捉えさせた。単元の終末では、「『豊かさ』を維持するために、海洋プラスチック問題に対して、どのような努力が必要になっていくのだろう?」という課題を、教科横断的に理科と社会で得た学びを関連させながら追究させた。その結果、生徒たちが自分の知識の深まりを実感しながら、主体的に問題の解決に必要なことは何かを考える姿が見られた。(高橋 祐貴)

 

 

【数学科】

数学的な見方・考え方を働かせて問題発見・解決する力が育つ授業の展開

既習の知識や技能を関連付け、統合的・発展的に考察する力を育てる指導の工夫

生徒たちは、身に付けた知識や技能を活用させたり、発揮させたりしながら、思考を相互に関連付けてより深く理解したり、創造したりすることに向かっている。本研究では、「振り返りの場で様々な考えを関連付ける活動」「既習事項と関連付け、次へ生かすパフォーマンス課題の設定」に取り組んだ。その結果、生徒は他の学習内容と関連付けて考察したり、学習のつながりを実感したりと、事象を統合的・発展的に捉える力の育成につながった。(宇都宮 憲二)

 

○問題把握、解決の過程、振り返りにおいて、既有の知識や経験をつなげ、数学的な見方や考え方を引き出す学習展開の工夫

問題把握、解決の過程、振り返りの場面において、既有の知識や経験を教材、他者、自己とつなぎ、数学的な見方や考え方を引き出す対話的な学びの工夫やまとめの充実を行った。その結果、積み重ねてきた問題解決の方法、数学的な見方・考え方を修正・改善して、主体的に、よりよく問題解決していく生徒の姿が見られた。(冨永 剛志)

 

○数学的な問題発見・解決プロセスの質を高める指導の工夫

数学の学習によって得られた知識そのものにも価値があるが、知識を獲得するまでのプロセスを自立的、協働的に実行できるようになることが重要である。本研究では「生徒が追究する意義を実感できる問題の工夫」「学びをつなげる振り返りの工夫」の2つの視点で授業改善に取り組んだ。その結果、生徒の「新たに出合った問題を自ら解決していきたい」という意欲を高めるとともに、問題解決の過程や結果を振り返って修正・改善する力を養うことができた。(山本 泰久)

 

 

【理 科】

科学的根拠に基づき、探究する資質・能力の育成

○一人一人の探究する資質・能力を引き出す指導の工夫
 ―他教科の見方・考え方を生かした授業を通して―

 一人一人の資質・能力を引き出し、伸ばすために学ぶ楽しさや意義を感じることができる授業づくりを目標とした。また、創造的に探究する力が必要とされる今日、各教科の見方・考え方を汎用する能力を身に付けることは実践者として活躍する上で大切なことであると考えた。その中でも特に国語と理科を関連付けて学ぶことで、事物・現象を科学的根拠から説明する力や想像する力が伸びていくと考えた。パフォーマンス課題の答え方として、国語の既習事項である主張-事実-理由付けを意識した「三角ロジック」の考え方を用いた。生徒は「理由付け」することの重要性に気付き、科学的な事象を自分のことばで説明しようとする姿勢が見られた。(沖野 俊也)

 
○科学的根拠に基づき探究する問題解決学習の展開
 ―「鍛える授業」から「自ら学ぶ授業」へ―

 「自ら学ぶ授業」では、教師の役割をファシリテーターに徹することで、生徒同士の活動の中で学びが生まれる授業を設計した。学び合いがスムーズに進む手立てとして、「座席を決めない、おしゃべり、席立ち自由」の形式で授業を行い、生徒同士の意見交流が活発に行えるよう、タブレット端末と授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」を活用し、学習した内容を整理し学級全体で多様な見方・考え方を共有できるようにした。探究課題(パフォーマンス課題)での協働学習では、正解だけでなく「納得解」や「最適解」などの問題解決や「多様性への対応」などの生きる力の育成を目指す。このことは、本校の目指す自立と共生の力の育成につながると考える。(真木 大輔)

 

 

【音楽科】

音楽的な見方・考え方を働かせ、音楽と心豊かに関わろうとする生徒の育成

 ○音楽的な見方・考え方を働かせ、学びの深まりが実感できる指導法の工夫

『荒城の月』を教材として扱った実践。世界中の人から愛されている滝廉太郎作曲の『荒城の月』にピアノ譜が残っていないのはなぜかという謎に迫る形で授業を展開した。歌の特徴と背景となる文化・歴史との関わりを理解させ、滝廉太郎に思いを馳せ、この曲にピアノ譜を作った4人の作曲家の楽譜を基に、曲想の変化を感じ取りながら、歌詞の内容にあうピアノを選び、表現を工夫させた。(三棟 優子)

 

 

【美術科】

美術や美術文化に対する見方や感じ方を深め、心豊かな生活を創造していく力の育成

 

 本実践では、工芸分野「八角小箱の装飾」における表現材料に着目し、金箔を使用することで生徒の美術文化に対する見方や感じ方が深まるように工夫した。初めに世界各国の金を用いた工芸品と日本の伝統工芸品を比較する形で鑑賞し、日本ならではの金の加工技術や装飾美を理解させた。金箔を専用の箔箸を使って貼る体験は、ほとんどの生徒にとって初めての体験であり、その難しさを実感するのも、伝統工芸品に対する理解や関心を深め、技術継承の大切さに気づく機会になったと考える。(野口 理佳)

 

 

【保健体育科】

豊かなスポーツライフの実現に向かう実践者の育成

 ○運動やスポーツの多様な関わり方を見つけ、運動有能感が高める保健体育学習の創造
豊かなスポーツライフの実現に向かう実践者の育成を目指して、体育分野における運動の実践や保健分野と関連させながら、体育理論領域での科学的な知識の習得や、よりよい解決に向けて思考していく学習を行うことで、運動有能感を高め、主体的に運動実践できる力の育成につながるであろうと考えた。

体育理論を通して、運動やスポーツの多様な関わり方について学習した知識を、バドミントンの学習活動の中で活用していった。「行う」、「みる」、「支える」それぞれの関わり方を通してバドミントンの楽しみ方を味わうなど、これまでとは違う多様な視点からの楽しみ方を味わうことができるようになってきた。(坪内 道広)

 

○運動やスポーツの楽しさや喜びを実感し、運動有能感が高まる保健体育学習の創造

豊かなスポーツライフを実現するためには、生徒に運動やスポーツの持つ楽しさや喜びを実感させること、そして生徒の運動に対する自信を高めることの二点が重要であると考える。ドリル練習で基本的な技能を身に付けたり、生徒の実態に応じたルールで試合をして課題の解決に迫ったりできるような授業を展開することで、生徒は運動やスポーツの楽しさを味わい、より前向きに運動に取り組むことができるようになった。(古澤 龍也)

 

 

【技術・家庭科】

生活の中の課題を見付け、解決する力の育成

(技術分野)技術を活用する力を育てる学習指導の在り方

 D領域「計測・制御に関する技術」の学習における実践。計測・制御に関する技術が、生活の中でどのような場面に使われているのかを考え、センサやアクチュエータなどの働きについて学んだ。また、studuinoとブロックプログラミングを利用して、遮断機や自動ブレーキ機能付き自動車などのデモ機を作成した。パフォーマンス課題として、計測・制御に関する技術を生活改善に役立てることができないかを考えた。(薬師神吉啓)


(家庭分野)習得した知識や技能を生活に生かす力を育てる学習活動の在り方
 

日本の食文化の特徴と食生活の課題を扱った実践。「よりよい食生活」を目指して、健康的に食べることだけでなく、持続可能な社会を目指して食生活で何ができるだろうか。食生活の変化や食料自給率、食品ごみなどの問題を、ジグソー活動を通して、それぞれの問題がどう関わり合っているのか、どう解決に結びつけるかについて考えた。消費者の一人として自分たちに何ができるか深く考え、実践に向けてのアイデアを提案することができた。(土手 佳代)

 

 

【英語科】

社会や他者と関わる中で、自分の気持ちや考えを主体的に表現し、伝える力の育成

○主体的に表現する力を高める言語活動の工夫 ―リーディング活動からスピーキング活動へ

本実践では、1年生を対象に小学校の外国語活動との連携を意識し、生徒同士、指導者とのやり取りを大切にし、豊富なやり取りの場面を十分に設定した。さらに、コミュニケーション能力を高める方法の一つとして、「描写力」と「表現力」を向上させることが有効であると考えた。授業では、生徒たちに教科書の挿絵について説明させたり、本文にない情報を織り交ぜた導入を聞かせたりした。そうすることによって、本文の内容を自分なりにアレンジしながらまとめる力につながっていくとともに、Show & Tellのようなスピーチにも抵抗なく取り組ませることができた。(河野 操)

 

○自律的学習者が育つ英語授業 -リテラチャー・サークルの実践を通して-

フリートーキングやパフォーマンステストなどで身に付けてきたコミュニケーション力をリテラチャー・サークルの活動で発揮させた。リテラチャー・サークルとは、ある程度のまとまった分量の英文を読み、その内容について小グループで話し合う学習者主導の活動である。生徒はさまざまな見方や考え方を学んだり、教科書本文の内容を社会の出来事や自分の経験と結びつけて考えたりできるようになった。また、人との関わり方も学ぶことができた。(河野 圭美)

 

○積極的に英語でやり取りを行う生徒の育成 -リテリングの指導に工夫を加えて-

単元のまとめとして,ただ教科書本文のリテリングを行うだけでなく,その単元に関連した自分のこと,社会的なことを含めた「本文内容+α」を発表させました。生徒はまず単元の内容をイラスト化します。次にそのイラストを英語で説明します。最後に,本文の内容に関連した自分の経験・体験を語ったり,これから自分はこうしたいということを語ったりします。さらに,他者の発表を聞いた上で,即興で質疑応答をするという,英語でのやり取りの場を設定しました。特に,5W1Hを意識して質疑応答させることで,話を膨らませたり,考えを引き出したりしました。各単元のまとめとして,このような学び合い活動を行うことで,様々なまとめ方があることや友達の表現のよさに気付かせて,生徒自身の表現力が向上することを目指しました。(向井 俊博)