令和3年度 第100回愛媛教育研究大会(附属中学校)

令和3年度 第100回愛媛教育研究大会(附属中学校)

研究主題
持続可能な社会の実現に貢献する実践者の育成
-既有の知識や経験でつながる「深い学び」の創造を通して-
(3か年研究最終年次)

基調提案

【国語科】
授業主題:平泉の場面での芭蕉の心情を読み深めよう
指導者:細川 美保
「平泉」の場面において、学習者自身が立てた課題「芭蕉は何に心を動かされたのか」について話し合いました。長い歳月をかけて推敲された『おくのほそ道』。その文章や俳句に表れている芭蕉のものの見方や考え方について、学習者自身で考えた「読み深める視点」を意識して読み深めていきます。言葉を根拠に、仲間と共に主体的に、多様な視点を持って課題解決することの楽しさや有効性を感じさせる授業展開を目指しました。 

授業主題:文学的文章を読み深めよう「走れメロス」
指導者:兵頭 宣彦
目の前の文章を正しく読み取り、根拠を求める「確かさ」。そこに自分の経験や知識をつなげ、登場人物や語り手、作品、作者、さらには自分自身と対話し、感じたことを言葉にしていく「豊かさ」。それらが一体のものとなり、本当の意味で読む力が付いたと言えるでしょう。「走れメロス」の実践を通して、「確かで豊かな言葉の力」の育成を目指しました。 

【社会科】
授業主題:多文化共生を実現する社会に必要なことは?
指導者:江角 紀行
空間的相互依存作用の視点でオセアニア州の地域的特色を理解させ、多文化社会化が進む日本でも近い将来求められる多文化共生を実現する社会に必要なことについて考察させました。特に、オーストラリアの白豪主義の撤廃から多文化主義への変更について、それらの背景と影響を多面的・多角的に追究させ、オーストラリアの多文化共生の成功の是非を検討させました。その際、生徒同士の対話、教師との対話、ゲストティーチャーとの対話といった「様々な対話」を通して最適解を求め続けさせたり、デジタル・ポートフォリオを活用して自分自身との対話を促したりして、深い学びの実現を目指しました。

授業主題:政策の妥当性について、よりよい判断基準を探りながら議論しよう
指導者:高橋 祐貴
本実践のキーワードは、「主権者教育」「政治的リテラシー」です。「18歳以下への10万円相当の給付」政策を教材として取り扱い、その妥当性について考察・判断する中で政策に対する自分なりの判断基準を見いだしたり、よりよい政策のあり方を構想します。解決困難な社会問題について他者との議論を通して考えることで、その解決方法のあり方を公正に判断することができる力の育成や主権者意識の涵養を目指しました。 

【数学科】
授業主題:ソーシャルディスタンスを意識した座席配置とは
指導者:宇都宮 憲二
コロナ禍の中、三密を防ぐために、学校生活の中でもいろいろな場面でソーシャルディスタンスが求められています。授業では、方程式を用いて、理想的な座席間隔を考えさせながら、求めた解を実生活に照らし合わせながら吟味させていきます。身の回りの事象を多様な考え方で考察しようとする態度や方程式を利用して筋道を立てて考える数学的な問題解決能力を高める授業を提案します。

授業主題:アルプスの少女ハイジを数学する
指導者:山本 泰久
「数学する」とは、数学的に問題発見・解決するプロセスを主体的に遂行し、それらを振り返って評価・改善しながら新たな価値を創造していくことです。本実践では、第3学年「関数 y=ax²」において、振り子の長さと周期の関係を関数 y=ax²とみなし、それらの関係を基に問題解決する方法を検討しました。情報活用能力を駆使することによりアップデートされた「きょうどう」の精神を発揮する学び合いを通して、生徒が「数学する」学びの実現を目指しました。 

授業主題:飲み物の容器の形が違うのはなぜだろう?
指導者:冨永 剛志
生活の中で使われている飲み物の容器。その形にある意味や機能について、容量は同じでも、グラスの形によって飲む人の印象が変わる、という一つの説を、数学的に解き明かしていきます。既有の知識や経験、数学的な見方・考え方を基に、事象の状況を図形の構成要素や条件に着目して捉える学びを保障することで、図形を直観的に捉え、論理的に考察し表現するとともに、その確かさを基に図形の計量を考察していくことにつなげていきました。

【理科】
授業主題:誕生月の星座って何を根拠に決まったの?
指導者:沖野 俊也
星座占いを扱うことは科学的ではないですが、我々の生活の中では根付いているものです。しかし、その星座がなぜ自分の星座となっているのか、「誕生日の夜にきれいに見えるから?」と何となくの勝手な概念を形成している人が多いと感じています。実際は違うことを知る驚きの中で年周運動と黄道の概念を身に付けさせることを目指しました。また、教室の広さを利用した天体モデルと学びのツールとして3年間利用してきた「三角ロジック」を学習内容の理解を促すために用いました。

授業主題:教科横断的な学習(理科・技術分野・総合的な学習の時間) テクノロジーを通じた災害の課題解決
指導者:真木 大輔 薬師神 吉啓 他
これからの学校教育では、各教科での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科横断的な教育が重要視されています。今単元では、STEAM教育の中でも、理科における探究学習の過程、技術分野のプログラミング教育に焦点をあて、単元構想を行いました。既有の知識や経験、理科や技術など各教科の学びなど、様々な「つながり」を通して、生徒の自己主導型の学習デザイン、教師のファシリテーションのもと、問題や課題、仮説などの立て方、問題解決に関する思考力や協働学習等の能力や態度を身に付けることを目指しました。

授業主題:「ばえる」を科学する
指導者:山根 典之
光に関して、日常生活との関わりが深く、直接体験が可能な題材として、「ばえる」写真を取り上げました。光に関する観察・実験の結果を図示して考察することなどによって、光の性質や光が進む時の規則性を考え、「ばえる」とは何か、科学的に説明することを目指しました。

【英語科】
授業主題:自分ができる国際交流について考え、発表し合おう ーSDGsを意識してー
指導者:河野 操
教科書本文の内容に関連ある国際交流や協力を題材に、推測も交えながら内容を伝える言語活動を行いました。また、SDGsを意識し、自分の関心のあるゴールを取り上げ、解決すべき課題について現状を簡単に説明しました。最後に、自分がしたいこと、できることを基に18番目のゴールを作り、自分の考えや意見を発表し合う姿が見られました。

授業主題:ガンジーの活動を通して、感じたことや考えたことを語り合おう ーリテラチャー・サークルを通してー
指導者:向井 俊博
NEW HORIZON 3 (東京書籍)Unit 5   A legacy for Peace において、リテラチャー・サークル(まとまった分量の英文を読み、小グループで話し合う学習者主導の活動)を行いました。さまざまな見方や考え方を学ばせたり、内容を社会の出来事や自分の経験と結びつけて考え話し合わせたりすることで、コミュニケーション能力を高める授業を目指しました。

【音楽科】
授業主題:「怒り」の表現に迫る!
指導者:三棟 優子
中学校生活最後の鑑賞の題材として、オペラを取りあげました。前時でオペラ「アイーダ」の鑑賞で総合芸術の魅力を味わった後、人間ならば誰でももちうる感情、今回は「怒り」を表現したアリアを聴き比べることにより、登場人物の心情などを管弦楽の響きと照らし合わせて鑑賞したり、同じ感情を異なる時代の作曲家がどのように表現しているのかを考察させたりすることにより、オペラの多彩な表現について考えることができました。  

【美術科】
授業主題:季節をデザインしよう!
指導者:大口 愛子
自分が選んだ季節からイメージされるものの形をデザイン化し、それらを実際に自分が作りたい商品の形にレイアウトしました。タブレット端末のペイントアプリを使って、自分が考えた形を取り込み、大きさ、取り込むものの数、並べ方、角度などさまざまな観点から自分のイメージに合うようにレイアウトを行いました。また、実際に友人のアイデアをの工夫点を考えたり、制作意図に触れたりすることで、自分のイメージを表現するために必要なことを考えることができました。

【保健体育科】
授業主題:運動の計画を実践、評価、改善しよう
指導者:古澤 龍也
3年体つくり運動の「実生活に生かす運動の計画」の授業を行いました。今の自分にとっての運動課題をもとに運動の計画を立て、実践・評価を行い、よりよい計画に改善していく授業を目指しました。自分や仲間の計画をよりよくしていくために、既有の知識や経験を基に自分の考えを伝え合うことができました。この経験が、豊かなスポーツライフを実現する資質や能力の育成につながればいいなと思います。

授業主題:多様な楽しみ方を伝えよう
指導者:坪内 道広
今回の学習指導要領の改定で新しく加わった、1年生体育理論領域「運動やスポーツの多様な楽しみ方」の授業を行いました。「運動やスポーツにはいろいろな楽しみ方がある」ということに気付くよう、生徒がこれまでに経験した場面を中心に、広い分野からの資料提示を行いました。また、「行う」視点からの楽しみ方だけでなく、「みる」「支える」「知る」という多様な視点からの楽しみ方を考える場面を設定することで、新しい楽しみ方を見付け出すきっかけにしました。授業後には、並行して行っている他の運動領域の授業の中で、これまでとは違う楽しみ方をしている生徒の姿が見られるようになりました。これらの知識や経験を生かして、これからの中学校生活の中で、運動やスポーツの多様な関わり方や楽しみ方を見付け出し、積極的に関わっていこうとする姿が見られることを期待したいです。

【技術・家庭科】
授業主題:IoTで課題解決に取り組もう
指導者:薬師神 吉啓
よりよい生活の実現や、持続可能な社会の構築に向けて、情報の技術とどのように向き合っていけばよいのかを考えるために、IoTを利用した課題解決に取り組みました。本時は、取り組んだ課題解決について相互評価をする中で、情報の技術のもつ良さや気をつけるべき点について考えさえたいです。   

授業主題:我が家の住まいの課題を解決しよう
指導者:土手 佳代
モデル家族の住まいの課題解決で学んだことを生かして、我が家の課題解決に取り組みます。本時は、我が家の課題解決に向けての実践計画を、「健康・快適・安全」「協力・協働」などの視点から相互評価しました。よりよい課題解決になるよう、実践計画を見直しました。

【学級活動】
授業主題:自分の生き方について考えよう
指導者:丸山 佑樹
自分の名前を教材にして、自分の生き方について考えさせました。自分はどのような人間になりたいのか、何を大切に生きていきたいのか、自分のこれからの人生を思い描きました。授業の中では、明るい未来を語ったり、悩みをこぼしたりしながら、それぞれの思いや考えを自分の言葉で語り合う姿が見られました。

【道徳】
授業主題:「差別や偏見に負けない」
指導者:萩山 知治
「差別や偏見のない社会」が大切である。このことは、多くの人が自覚していることですが、なぜ、偏見や差別が生じてしまうのか、どうすればなくすことができるのか。こうした問いに答えた本資料の主人公の言葉に、読み手は心揺さぶられます。本時では、生徒の内面の可視化を重点に置いて、道徳的価値の自覚を深めさせ、差別や偏見に負けない社会を築こうとする心情を育てることを目指しました。